きのか特許事務所の弁理士室伏です。このシリーズでは、「特許情報からどんなことが分かるか」をお伝えするために、特許情報の簡易分析事例をご紹介します。
第1回はゲーム業界の簡易分析事例を、第2回はニット業界の簡易分析事例をご紹介しました。
そして前回は、「他社がどんな開発体制になっているのか?どんな組織があって、最近はどこに注力しているの?」ということが特許情報から分かる、というお話をしました。
第4回となる今回は、前回の続きとして、他社の開発体制を年齢層別にみることができるというお話をします。
1. まずは出願期間別に発明者をプロット
特許情報には「発明者」の情報と「出願日」の情報が載っています。つまり、その発明者がいつ出願したか、ということが分かります。発明者ごとに出願期間のデータを集めることで、その発明者の大体の年齢層が見えてくるのです。
例えば出願期間を外部変数として、ある会社の発明者別の出願件数をプロットすると、以下のようなグラフを作ることができます。この例では、2000年以前の出願の発明者別の件数と、2001年~2010年の出願の発明者別の件数と、2011年以降の出願の発明者別の件数とを、バブルの大きさで表しています。
2. 他社の開発部の年齢構成とキーパーソンを予測
例えばcさん、dさんは、2011年以降から出願を始めた発明者であり、その会社の若手開発者であると予測することができます。
またVさん、Uさんは、2001年~2010年にも出願をしているが、2011年以降も出願している発明者であり、その会社の中堅開発者であると予測することができます。
そしてQさんは、2000年以前から最近までコンスタントに出願している発明者であり、ベテラン開発者であると予測することができます。
最近出願していない発明者は、引退したか、転職したか、または部署移動で開発現場から離れている者であると見ることができます。
ベテラン開発者のQさんや、中堅の開発者のUさんは、出願件数が多く、昔から出願をしている発明者ですので、技術上のキーパーソンとなっている可能性が高いです。
3. まとめ
とある会社の特許分析から、開発部の年齢構成とキーパーソンの予測を行いました。
特許情報には会社のセンシティブな情報が含まれており、これらの分析により他社の人事情報を予測できる、ということがお分かりいただけたかと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。